俺ら参上ッッ!!
「もう一度聞くよ…
恋一のこと、好き??」
「……うん、好き」
何の迷いもない回答だった。
今さらなに当たり前なこと聞いてるんだ俺は…
でも…
「そうだとしても、俺は諦めないから」
「え…」
身体が動いた。
ひかりちゃんを抱きしめていた。
「聖くん…!」
「ほら…すぐこんなことだってできるんだよ?」
こんなイタズラっぽいことする予定じゃなかった。
だけど、ひかりちゃんが目の前にいるとどうしても意地悪したくなる。
「はな…してよ…」
「ひかりちゃんが俺から逃げられるならね」
ひかりちゃんの弱い力じゃできっこない。
分かりきっていても、やっぱりいじめたくなる。
「聖くんの…意地悪」
上目遣いで、涙目で言うひかりちゃん。
やばい…それは…
「ひかりちゃん…」
「聖くん!?」
思わず顔を近づけた。
後10㎝…
後5㎝…
後…2㎝
「っ…」
途中で目を開けると、ギュッと目を瞑って怖がっているひかりちゃんがいた。
何やってるんだ俺は…!
「ごめん…」
俺は身体を離した。
好きな人を怖がらせて、ほんとばかだ…
「ごめんなさい聖くん…
私がはっきりしないから…」
「なんで…ひかりちゃんが謝るのさ」
自分が情けなくなる。
強く歯を噛みしめた。
「私、聖くんの気持ちには…」
「…言わないで」
まだ…
「まだ俺負けたわけじゃないし、これからだからさ」
ひかりちゃんに精一杯の笑顔を見せる。
ちゃんと笑えてるかな…
「……」
ひかりちゃんはとても複雑そうな顔をしている。
正直自信なんてない。
ひかりちゃんを振り向かせるなんて不可能に近い。
だけど、諦める理由にはならない。
「俺は…
精一杯の俺の気持ちをひかりちゃんにぶつけるよ」
「聖くん…」
「だから…俺が何としてもネクタイ奪うから」
それだけ言って図書室を去った。
なんなんだ…この胸の痛み。
今まで感じたことない、風邪でも病気でもない痛み。
「これが…誰かを本気で好きになるってことか…」
こんなに痛いなんて知らなかった。
もしかして莉子も…
莉子も同じ状況だ。
諦めたって言ってるけど、絶対心の中では諦めてない。
莉子も辛い状況で頑張ってるんだ…
俺も頑張らないと…
そう思いながら教室へ帰った。
「ただいま莉子」
「おかえり聖!
…ねぇ、それケーキの図鑑じゃない」
「へ…??」
持ってきた本を見てみると、レシピ本は1つもなく、世界の様々なケーキが紹介されてある図鑑だった。
「嘘だろぉぉおおお!!!!!」
…まだまだみたいだ、俺は。