あの日もアサガオが咲いていた。
その公園に立ち寄り定位置になっているベンチへとゆっくり腰を下ろした頃には、先程の手紙のことなど絢也の頭の中からすっかり消えてしまっていた。
「…ふぅ」
ベンチに浅く腰を掛け呼吸を一つ。
ここに来てやっと、絢也は心から息を吐くことが出来る。
張り詰めていた糸が切れるように、解放された気分になるのだ。
すぅと空気を肺に送り込みながら絢也は思う。
蜘蛛の糸から逃げることの出来た蝶もこんな気持ちなのだろうか、と。
そんな少し現実離れした思考の中で目を瞑りながら呼吸を繰り返した後、絢也はそっと下ろしていた目蓋を上げた。
その瞳は学校を出たときよりも幾分この景色を映しているように見える。