あの日もアサガオが咲いていた。




そしておもむろに鞄に手を伸ばすと、中から読みかけの文庫本を取り出した。


表紙の角は少しばかりほつれ、よく見ると閉じられている紙は所々に小さな黄ばみが窺える。


それでも本として良い状態を保っているそれは、丁寧に何度も読み返しているものであろうことが一目でわかった。


タイトルを見ればそれは今話題の純愛小説ではなく、古い歴史小説のようで。


甘い顔立ちをした絢也の容姿とそれは些か不釣り合いに見える。

しかしその本は小さなその手にとても馴染んでいた。


まるでそこにあるのが当然だというように。


絢也は茶と藍で出来たストライプ模様の栞を挟んでいたページを開くと、そっと視線を紡がれた文字の列へと落とす。




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