あの日もアサガオが咲いていた。
子どもが遊ぶような用具のない小さなこの公園に人の姿はない。
絢也が此処で子どもの姿を見たことは片手で数えるほどしかなかった。
しかし幾つもの街灯があり、近くの大通りからは車の音が途切れることなく行き交っている。
静かすぎることもなく、五月蝿すぎることもない。
この音の狭間が絢也は好きだった。
孤独でもなく、喧騒でもなく。
決して拒まれることのない空間。辺りと一つになれる空気。
それが絢也の世界なのだ。
彼はゆっくりと息を吸うようにその風景に溶け込んでいく。
そして息を吐き出すように、そのまま物語の世界へと身を投じた。
まだまだ幼さを残すその容姿とは裏腹に、文字を追う瞳は酷く大人びている。