あの日もアサガオが咲いていた。
世の中とは不条理なもので。
背伸びをした子どもはその幼さにも綻びにも気付かれず大人っぽいと持て囃される。
それに対して本当に先に心と頭が成長してしまった絢也は、周囲の目には異質な存在に映ったのだ。
自分たちとは違う。
それだけで人は彼と距離を置く。
無意識に、時に故意的に。
勿論そのことに気付かない絢也ではない。
そして彼は話すという行為を捨てた。
感情を表現する方法の一つを捨てたのだ。
周りとの距離を保つために。
元々表情の変化に乏しい絢也がそれを捨てることは、外への交流を捨てるようなもの。
そして彼は学校という小さくも大きな枠の中で、必然的に孤立していった。
それが更に彼を大人にするとも知らずに。