あの日もアサガオが咲いていた。
想像が出来なかったと言ってもいいかもしれない。
絢也はそんな自分を見たことがなかったのだから。
それを見るには、絢也は少しばかりいろんなことを知りすぎている。
彼は奥底に熱を隠した瞳で努めて冷静に世界を見ていた。
内の内に知らずのうちに抑え込んだ、幼い自分の小さな我儘から目を逸らして。
「……あれ…?」
一体どれくらいの間本の向こうの世界に意識を持っていかれていたのだろうか。
一度好きなことに没頭し始めると周りが見えなくなる。
絢也の数少ない短所の一つだ。
話の区切りがよくなったところで息を吐こうと顔を上げれば、辺りの色は本を読み始めたときとは大分その雰囲気を変えていて。