あの日もアサガオが咲いていた。
まだ赤よりも白に近かったはずの空は、既に赤を通り越して紺の色を深くしている。
いつの間にか街灯には独特の白い光が宿っていた。
どうやらその光が本を照らしてくれていたらしい。
(そろそろ帰らないと…)
正確な時間はわからないが、あまり遅くなると母が仕事から帰ってきてしまう。
そう思い、読んでいた本を静かに閉じて鞄にしまおうとする絢也。
そしてそっと横に置いてあった鞄を開けたときだった。
カサリと絢也に指に当たった何か。
(…ん…?)
チクリと痛んだ指先に一体なんだと思って鞄の中を覗き込めば、それは帰り際に下駄箱で見つけたあの白い封筒で。
(…忘れてた)
本を読むのに夢中で、すっかりその存在を忘れていた。