あの日もアサガオが咲いていた。
少しばかり申し訳ない気持ちになりながら、絢也は文庫本を鞄に入れるとそのまま交換するようにその封筒を取り出す。
じっと見つめる全く見に覚えのない封筒。
差出人も見当がつかない。
学校からの事務的な手紙にしては、些か洒落すぎている。
例えるなら、そう。
海外のクラシック映画にでも出てきそうな。
どこか特別にも見えるそれ。
それほど厚みのないそれは、入っていても便箋二枚といったところだろう。
一体何が入っているのか。
開けてみればいいとは思うものの、なかなか手が動かない。
蛍光灯が辺りを照らすなか、絢也はただただ謎のその封筒を見つめていた。
どうしてこの封筒が特別だと思うのか。理由はわからない。
ただ、本能が何かを察している。