あの日もアサガオが咲いていた。
「少年。こんな時間に何やってんの?」
そんなとき、ふと頭上から落ちてきた声。
こんな時間にこんな場所で声をかけてくるなんて。
一体誰だと、絢也は瞬時に声の主を記憶から探す。
しかし
(知ら、ない)
絢也の記憶の中にその声を持っている人物はいない。
途端、沸き上がってくる恐怖感。
それに負けないようにすっと顔を上げれば、目の前には不思議そうな表情をしている二十代後半から三十代くらいの男が絢也の前に立っていた。
黒いハット帽をかぶりTシャツに軽いジャケット、緩いジーンズという出で立ちのその男はどう見てもサラリーマンには見えない。
大人の男を感じさせる顔の作りとは裏腹に、首を小さく傾げた表情はどこか幼さが窺える。