あの日もアサガオが咲いていた。
「こんなところに一人でいたら危ねぇぞ」
最近は物騒なんだから、と。
目の前の男は片手にコンビニ袋をぶら下げながら、そう言って絢也に微笑みかける。
下がる目尻に細められた瞳。きゅっと形よく上がった自然な唇。
勿論、絢也にこの男のような知り合いはいない。
しかし顔を見れば、先程のような恐怖心が消えたのも事実で。
本能的に悪い人ではないのだろうと感じた絢也は、少し戸惑いながらも男の言葉に素直に頷いた。
だが、手の中にある封筒が気掛かりで立ち上がることが出来ない。
「……」
「…?」
返事をしたまま微動だにしない絢也に、男は再度不思議そうに首を傾げる。
そしてその手に握る封筒を視界に入れた瞬間、驚いたように目を見開いた。