あの日もアサガオが咲いていた。
「新垣先生と佐藤先生は今年が初めてでしたね」
そんな言葉では説明しがたい空気を壊したのは、少しばかり萎れたそれ以上に柔らかい日向のような声。
その声の主をここにいる誰もが知っている。
半円に並べられた机の中程に座っていた年配の女性がそう問い掛けた。
そんな問いに入り口近くの机の端に並んで座っている若い二人が"はい!"と元気良く頷く。
一人は先程嬉しそうに声をあげた男。新垣(ニイガキ)というらしい。
その隣に座っている幼さの残る顔の女性が佐藤という名前のようだ。
「二人とも、楽しみですか?」
声と同様、その顔にしわを作りながら柔らかな笑みを浮かべる女性に二人はもう一度力強く頷く。