あの日もアサガオが咲いていた。
人足も疎らな放課後の下駄箱。
その中のある小さな扉の前で一人立ちすくむ男がいた。
着ている制服は、和泉原学園高等部のものである。
緊張した面持ちで下駄箱の蓋に手をかける男。
ゴクリと喉を上下させた後、そっとその蓋を開けた。
「…っ」
その先には真っ白な封筒が一つ。
彼の下足の上に丁寧に置かれている。
それを見た瞬間目を見開いた彼は、すぐさまそれを手に取り裏返した。
差出人は書いていない。
しかし彼は知っていた。
この封筒の意味を。
その差出人を。
穴が開くほどに見つめたのは、赤い朝顔の印。
「…き、たっ!」
そう呟いた声は小さくも力強く。
拳はガッツポーズを握り、顔には隠しきれな歓喜。