あの日もアサガオが咲いていた。




そしてその手に握られたあの一枚の白い封筒。

男は一度ぎゅっと強く目を閉じた後、踵を返し校内へと向かった。


グシャリと音が鳴るほど強くそれを握りしめたまま廊下を駆け出した男の名は今城陽太(イマシロ ヨウタ)。

今年の春、和泉原学園高等部に進学したばかりの男である。


そして彼はこの瞬間をずっと待ち続けていた。


あの悪夢の日から、ずっと。



バァンッ




「ゆずー!!ゆーずー!!」




跳ね返るのではないかと思うほど勢いよく開いた"1-E"と書かれた教室の扉。

勿論それを力の限り開けたのは、下駄箱から全速力で走ってきた陽太だ。


息を乱し肩を上下させながらある一点を見つめる陽太。

その額にはじんわりと汗が滲んでいる。




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