あの日もアサガオが咲いていた。
そんな学年で噂の二人の関係は、恋人になって久しい。
相変わらず仲が良いことは同級生の間では周知の事実である。
嬉しそうに息を弾ませたまま柚子の近くに歩いていくと、陽太は彼女の前の席に腰を下ろした。
椅子に跨がるように後ろ向きに座り柚子と向き合う。
そしてそのままガッと両手で柚子の両肩を掴んだ。
「ゆずゆずゆず!やばいよ!俺やった!きたよ!!」
「よ、よーちゃん落ち着いて。きたって…何が?」
細い肩を力任せに揺らす陽太に、ぐわんぐわんと揺れる柚子の上半身。
綺麗なミディアムの黒髪がバサバサと揺れる。
柚子が手に持っていた文庫本は、当然のように小さな音をたてて机の上に落ちた。
勿論、陽太がそれに気付くことはない。