あの日もアサガオが咲いていた。
「それで?何がきたの?」
シュンと叱られた犬のように肩を落とす陽太に、穏やかに微笑んで首を傾げる柚子。
もとより彼女は怒っていたわけではない。
それを伝えるため、柚子はいつも以上に柔らかな声を出した。
その問い掛けに本来の目的を思い出した陽太は勢いよく顔を上げる。
そこには先程まで落ち込んでいたはずの面影は何処へやら。まるで見当たらない。
まさに百面相とでもいうべきか。
それくらいわかりやすく"陽"の感情を表に出す陽太。
コロコロと変わる彼の表情にどうしようもなくときめくのは柚子だけの秘密だ。
そんな柚子の心境など知るはずもない陽太は、ずいっと右手を柚子に向けて差し出す。
キラキラと瞳を輝かせながら。