あの日もアサガオが咲いていた。
いつもクラスの中心で優しく面倒見の良いお兄さん的存在の陽太。
周りの意見を聞き、上手く取りまとめる力は持って生まれた才能であろう。
そんな彼がこうも自己主張をしているのはとても珍しい光景で。
クラスメートの誰もが、いや彼を知る誰もがこんな陽太の姿を見たことがないはずだ。
それくらい今の陽太は込み上げてくる感情を抑えられずにいる。
「…本当に…?」
しかし柚子は知っていた。
陽太がこれほどまでに興奮する理由を。
この一通の手紙の威力を。
そして彼女もまたこの瞬間を心の底から望んでいた。
「本当だって!ほら!」
未だに放心状態の柚子に、陽太はガサガサと封筒を開け中に入っていた二枚の紙を取り出す。