あの日もアサガオが咲いていた。
その舞台に立つ人間などほんの一握りに過ぎず、皆が自分とは関係がないと思うものだ。
だが陽太は自らその一握りになりたいと願い出た。
それくらい、彼はこの機会にかけていた。
「…今回は、絶対だね」
ぎゅっと陽太の手を握り、柚子は祈るように言葉を紡ぐ。
微かに震えはその手に陽太が気付かないわけがない。
柚子は強く願っていた。
陽太が再びあの舞台に上がることを。
自分よりもずっと緊張した面持ちをしている柚子に、陽太は真っ直ぐな視線を向け力強く頷く。
「うん。今回は絶対だ」
必ず、あの時のような失敗はしない。
あの場所を汚すようなことはしたくない。
それは陽太の強い思いだった。
(ワンステは…あんなんじゃない)