あの日もアサガオが咲いていた。
たくさんの弟や妹を持つ彼は、幼い頃から当たり前のように我慢というものを覚えて。
そして当たり前のように他の兄弟の我儘を優先してきた。
自分のことはいつだって後回し。
本人は自覚していないようだが、根っからの兄貴体質なのである。
そんな陽太のお願いを周りの人間が無下になど出来るはずがない。
そんな周囲の思いなど知らない陽太は、二つ返事で賛成し喜んでくれた両親にとても感謝している。
そしてこのワンステは陽太にとって久しぶりの、それでいて絶対に譲れない我儘なのだ。
「なんかね、今回はいける気がするんだ」
じっと手紙を見つめ、ゆっくりと唇の端を上げる陽太。
予感している。この夏の変化を。
何故だかはわからないけれど。