あの日もアサガオが咲いていた。
「ただいまー」
夕方の六時を少し過ぎた頃。
道路には既に小さな子どもたちの姿はなく、ちらほら見えるのは帰り道を急ぐサラリーマンや塾に向かう学生の姿だけ。
あちこちから夕食の匂いが漂うなかガチャッと音をたてて扉が開いたのは、住宅街にあるとある一軒家の玄関だった。
扉を開けたのはこの家の長男・望月號樹(モチヅキ ゴウタツ)である。
今年和泉原学園中等部の三年に進級した彼は、今日も所属しているバレー部の活動に勤しんでいた。
県内では弱小と呼ばれている部だが、それでも號樹はバレーボールという競技を好んでいる。
元々バレーボールをする中学男子の人口は少ない。
そんななかで何とか部を維持している和泉原のバレー部。