あの日もアサガオが咲いていた。
そんななか、会議室の扉から見て真正面-机の中央-に腰掛ける年をめした男が、ホッホッホッと愉快そうな笑い声をあげた。
まるでサンタクロースのように穏やかな、今にも音楽が流れてきそうな声。
その声に会議室中の視線が集まる。
視線を向けられた先では、白い髭を携えた老人がそれを右手で撫でながら笑っていた。
瞳は優しく三日月をかたどっている。
「…校長。随分楽しそうですね。なんかありましたか?」
龍野が訝しげに問い掛ければ、更に深まる老人-校長と呼ばれた男-のニコニコとした笑み。
その表情に龍野はハァ、と溜め息を吐く。
そんな龍野を見た後、老人はまるで悪戯を思いついた子どものように瞳をキラキラ輝かせ口を開いた。