最高の演奏
心臓の音がうるさかった。
周りの音は全て掻き消されるかのよう。
もう彩葉と町の声なんて聞こえない。
ドクン、ドクン…
私の心拍数はどんどんスピードを上げる。
…あの人に近付くほどに。
そして、
私の番が来た。
私は「お願いします」と少し頭を下げる。
あの人は「はい」と返事をした。
測定が終わると、
「はい、どうぞ」
あの人から測定用紙が渡される。
あの人がほんの少し頭を上げた瞬間だった。
しゅっとしていて、
鼻筋の通った綺麗な顔。
私は心を奪われた。