武士道セブンティーン!!
はは、と笑ったあたしをじっと見て、黙っていた永倉。
やがてその笑みをあたしが消した時、静かに口を開いた。
「じいさんは?」
「え?」
「じいさんはどうだったんだ?お前の決断に。何も言わなかったのか」
そんなことが気になったのか、と思った。
一瞬何聞かれたか分かんなかったし。
少しだけ、おかしかった。
「じいちゃんには、殴られてすごい怒鳴られました。
怪我したことにも、手術をやめると言ったことにも」
「…………」
「酷くないですか?まだ包帯も取れてない時にですよ。
わりといつでも怒鳴ってる人ですけど、あんな勢いで怒鳴られたのは、後にも先にもあの時だけです」
殴られて、ベッドから落ちたくらいだ。
どんなけ激しく殴ったんだって感じだ。
ぶっちゃけアレはトラウマになってる。
「…………お前のじいさんは、すごい人だな」
「……ん?話聞いてました?」
「聞いてたよ。だから言ってんだろーが」
「おかしいですね。孫に手ェ上げるような人ですけど」
「それは、愛情の裏返しって言うんだよ。
お前のこと思ってるから殴ったんだろ」
「…………」
「普通、そんなひどい怪我負ったあとの奴に、ましてや孫に、怒鳴ったり手ぇ上げたり出来ねぇだろ。
それでも引かないで、それをやった。何でかって、お前に分かって欲しかったからだ」
「…………」
「お前に諦めないで欲しかったんだろ。逃げないで、向き合って欲しかったんだ。じゃなかったら殴らねぇだろ」
孫が可愛くねぇじいさんなんていないだろうからな。
永倉はそう言って、ごろりと縁側に寝そべった。
ゆらゆらと短い癖のある前髪が揺らめいている。
夜空を見上げるその顔を見つめて、あたしはじいちゃんを久しぶりに思い出した。