武士道セブンティーン!!
厳しい人だ。
戦後のごたごたした時代を生きてきた人だから、頑固で融通が利かなくて、
自分にも人にも厳しい人だった。
剣道の練習だって、何度 はっ倒されたことか。
普通 孫相手に本気にならないだろ。大人気ない。
それでも、それ以外は基本的にあたしには甘くて優しいじいちゃんだった。
そう。厳しいといっても、手を上げられたのは、後にも先にもあの時だけ。
それも、怒りに任せてとかそんなことじゃない。
あたしのことを思ってだ。
「…………分かってる」
「…………」
「分かってるんですよ、そんなことは。
じいちゃんは、あたしが逃げたことに怒ったんだ。
あたしを思ってのことだってのも、分かってます。
でも、ダメなんですよ」
「ダメ?」
「…………怖いんだ」
「怖い?」
訝しげな声を出して下からあたしを見上げる。
その顔は見れないで、完全に俯いた。
「怖い。だってもう、手術しても何も見えないから。
あの時 取り戻せるはずだったものは、もう手に入らないから」
「…………」
「だから逃げた。あれからずっとこのままです。
臆病で、何にも気が入らない。
諦めぐせのついた、いいかげんな人間です」
何にも本気になれない。
強くなんてなれない。
あたしは何も、変わってない。