二重人格神様~金と碧の王~


「い…たっ」


思ったよりいい音がした。同時に額に痛みが走り、額を押さえながら目の前の彼を見つめればムッとした顔。


「お前さ」

「…え?」


「なんで、目を瞑るんだよ。俺が嫌いなんだろ」


よく聞こえなかった。あまりにも小さな声で呟いたから。


「ごめっ、よく、聞こえない…です」


「当たり前だ」

「え?」


なにが、当たり前なの?

「あの、意味が…」

「分からなくて、いい。聞こえないように言ったんだよ、ばか」


「…んっ」


囁くように"ばか"と言われたあと、私の唇は塞がれた。


頭を抑えられる、強引な仕草なのに触れる唇はとても優しかった。


触れるだけ。何度も離しては触れるだけのキスをくり返す 。時折、唇をくわえられ少し吸われるようなこともされたけど、それ以上深いキスにはならない。



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