二重人格神様~金と碧の王~
「そ、そうだ。わたし、グレンくんと、約束があったんです。あ。はは。忘れてました!」
わざとらしい、言い訳だが、彼から離れるにはこれしか、方法がない。
作り笑顔を浮かべながら、言えば、気に入らないのか、海鈴さんの瞳が細められ"そう"と呟く
「そうなんですよ。あ、だから、私は先に行きますね」
ドアを指差し、その場から離れようとすれば、突然伸びて来た手に引き寄せられ、ギュウと海鈴さんに抱き締められた。
「ちょっ」
待って、なんて、言う前に腰に手をまわされ、密着する身体に思わず私は抵抗をやめ、彼の名前を呼ぶ。
「海鈴、さん?」
何も答えない。
「あの、約束が…」
それでも、何も言わない彼に、そっと、海鈴さんを見上げようとすると、少し身体が離れ、その瞳に私がうつる。
「逃げるなよ」
「…あ」
けれども、その瞳は美しいブルーではなく、ゴールドの瞳。
ドクンと、その瞳に胸が嫌な音を立てた。
「…あなた」
「昨夜ぶり、だな」
やはり!昨日の彼だ。昨日のことが蘇り、抱かれたまま身体が震えた。
・