二重人格神様~金と碧の王~


***

「いのり、もう起き上がってもいいの?」


「うん。心配してくれてありがとう」


その日の昼過ぎ、わたしはグレンくんとともに部屋にいた。


あのあと、身体を離したあと、どっちも口を開こうとはしなかった。


気まずくはないけれど、なんとも言えない空気にグレンさんは「もう、行く」と一言つぶやき出て行ったのだ。





グレンさんの熱に惑わされて、おかしくなりそうだった。思い出すだけでも恥ずかしい。



ぞれで、すぐにベッドに戻って暫くするとグレンくんがたずねてきた。熱を出して、戻ったとだけ聞かされ心配をしていたらしい。



「そっか。でも、お兄様ってばやるな。夜会の場で堂々といのりを抱っこするんだもん。あの後、会場では二人が仲睦まじいってみんな言ってだぞ」




「え、そう、なの?」



それは、気持ち悪くて歩けなくて、海鈴さんに運んでもらった時のことだろう。そりゃ、そうだよね…グレンさん、手貸してくれるだけで良かったのに…あんなことしてくれたんだもん。


でも、いま、思うと嬉しい。




無意識に笑っていたのか、グレンくんは見透かしたように微笑む。


「いのり、嬉しそう」


「え?」



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