二重人格神様~金と碧の王~
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「いのり、もう起き上がってもいいの?」
「うん。心配してくれてありがとう」
その日の昼過ぎ、わたしはグレンくんとともに部屋にいた。
あのあと、身体を離したあと、どっちも口を開こうとはしなかった。
気まずくはないけれど、なんとも言えない空気にグレンさんは「もう、行く」と一言つぶやき出て行ったのだ。
グレンさんの熱に惑わされて、おかしくなりそうだった。思い出すだけでも恥ずかしい。
ぞれで、すぐにベッドに戻って暫くするとグレンくんがたずねてきた。熱を出して、戻ったとだけ聞かされ心配をしていたらしい。
「そっか。でも、お兄様ってばやるな。夜会の場で堂々といのりを抱っこするんだもん。あの後、会場では二人が仲睦まじいってみんな言ってだぞ」
「え、そう、なの?」
それは、気持ち悪くて歩けなくて、海鈴さんに運んでもらった時のことだろう。そりゃ、そうだよね…グレンさん、手貸してくれるだけで良かったのに…あんなことしてくれたんだもん。
でも、いま、思うと嬉しい。
無意識に笑っていたのか、グレンくんは見透かしたように微笑む。
「いのり、嬉しそう」
「え?」
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