二重人格神様~金と碧の王~



『お父、さ、ん...』


あぁ、わたし、泣いている。

声を押さえ、わたしは泣いている。


さみしくて、さみしくて、怖かった。

夢なのに、よく、覚えていて、胸がなんか痛い。


『お母さん...わたし...』

わたし...


『ひとり、ぼっち...だよっ』


あ...

そう、私は、ひとりぼっちだ。


昔も、いまも...わたしはここに...


『ひとりぼっち...だよ』


その瞬間、夢の世界が闇につつまれ、泣いているわたしだけが白い光に照らされている。


この夢の世界には二人だけ。


わたしは、ひとりだ。お父さんがいない時間、わたしはいつもそう思っていた。


優しいお父さんが大好きだから、我慢していたけれど、ずっとお父さんといたい。

毎日帰ってきて欲しい、出張なんて嫌だったんだ。

でも、いつからだろうか、それが当たり前になって、泣かなくなった...いや、泣くのをやめたのは。


もう、覚えてない。


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