二重人格神様~金と碧の王~
「いいんです。だって私、今まで沢山助けてもらいました。だから、そんな事ないです」
「そんな事、あるよ。だって、聞いた話しだと…グレンが助けたんだってね」
「…はい」
「それが、少し悔しいんだ」
私を抱く腕に力がはいる。痛くないけれど、痛い。そんな抱擁だ。
「実は、さっきグレンから戻ったんだ。その時呉羽と一緒にいてね、聞いたんだ。いてもたってもいられなくて、戻ってきた。フェイランに詳細を聞こうとしたらタイミングよくいのりがいて…我慢出来なくて声をかけてしまったよ」
「そう、だったんですか」
「あぁ、意味がわからなくて酷く動揺してしまった」
「…あ…は、い?」
あ、あれ…なんか、引っかかる。海鈴さん、今初めて知って、さっきグレンさんから戻ったの?
待って、そうなると…おかしい。だって、海鈴さん私の様子を見に来てくれて、手を握ってくれてたんじゃないの?
彼が言う以上に私も意味が分からなかった。なんだか、胸騒ぎがして。けれども、その事を口にするのが怖い。
「いのり?」
「え?あ、はい」
不意に彼に呼ばれ見あげると、突然顎を掴まれくちびるを奪われた。
・