二重人格神様~金と碧の王~


グレンさんはここに来てから一口も食べてない。



と、言うか…突き飛ばしすぐに謝った。だが、許してもらえるわけがなく、そのままの状態でここに無理やり連れてきたのだ。


そのことも気に入らないのだろう。


「あの、グレンさん…本当に、ごめんなさい。機嫌、直してくれませんか?」

「断る」


「うっ」


一刀両断され、心が痛い。



アレスを見ればグレンさんに見えないようにため息をついている。ため息をつきたいのは私だよ。


用意された野菜をフォークにさし、口に運ぶ。その間も、グレンさんの顔は不機嫌のまま。



な、なんとかしないと…。不機嫌にしたのは私だし、アレスも困るだろう。


「え、えっと…あ!こ、これ凄く美味しいですよ!グレンさんもどうですか?」



「いらない」


「そ、そんな事を言わずに…は、はい!どうぞ」


フォークに突き刺し。それをグレンさんに向けると不機嫌だった顔が強張った。



「…」


黙ったままそれを見つめ、プイッ顔を反らす。あぁ、やっぱりダメか…

落ち込む私に、それを見ていたアレスが笑みをこぼす。



「グレン様、せっかくいのり様が食べさせてくれると言っているんです。素直になってはいかがですか?」


「…あ?」


「ちょ、アレス!挑発したら…ダメだって」


必死でフォローするもの、グレンさんの顔はさらに不機嫌さを醸し出す。



もう、だめだ。そう思ったのもつかの間、グレンさんは私の手首をつかみガタッと豪快に音をたて立ち上がる。



「…え?」


「もういいだろ。行くぞ」



「は?あ、ちょ、まだ食べて…って」



手を引かれ、そのまま引きずられるように部屋を出ていく。なんで、いつもこうなるの?


振り返るとアレスは「仕方がない」と言った顔で私を見ている。アレスが挑発しなければ良かったのに!そう思ってももう遅かった。




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