二重人格神様~金と碧の王~
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「グレンさん、どこに行くつもりですか?」
手を引かれ部屋を出た後、私達は屋敷の渡り廊下を歩いていた。いや、歩かされていた。
グレンさんは先ほどから何回も「どこに行くの?」と聞いているが、無視をされている。
上記の質問、いったい何回したことか。声に出さずにため息をはく。
もう、いい加減に機嫌を直して欲しい。悪気はなかったんだもん。
だって、あんな夜を過ごして朝になったら海鈴さんではなく、グレンさんだなんて思わないよ。
うかつだったと思う。以前も執務室で眠る彼に同じような事をした。
本当になんで学ばないんだろう。
「…」
お互いだまったまま、ただ廊下を歩く。規則正しい足音を聞いてると、あることを思いだしてしまう。
それは、海鈴さんじゃない。グレンさんと過ごしたこの前の、夜の事。
忘れていたって言うより、考える余裕がなかったんだけど…わたし、あの日グレンさんと眠ったんだっけ。
抱きしめられ眠った事は、いま、考えると鮮明に思い出せる。
グレンさんの暖かい温度と心臓の鼓動。たくましくて、思った以上に優しかった腕。頭上から聞こえる声も私の耳の奥に焼き付いている。
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