二重人格神様~金と碧の王~


「あの、男はその傍観者だ」


「…えっ!?そうなの!?」


「あぁ、天界に降りて来たのは随分と久しぶりだ。まだ幼かった頃、一度だけあった」


僅かにペンを握る手に力がはいる。少し、震えていた。


「グレンさん?」


何を思い出しているのだろう。ペンを離し、そのまま額を押さえる。髪の毛の隙間から見える横顔は何かこみ上げてくるものを必至に抑えているよう。


「あの男を見ると、嫌な事を思いだす…昔の事…あの牢獄のことを」


「…ろう、ごく…あ」

 
牢獄と言われ思いだす。少し前に、ライに連れ去られ私は牢獄に閉じ込められた。


そして助けられた時、海鈴さんから「ある事」を聞いた。



『あの場所は、グレンが出て来た時に閉じ込め、表が誰であるか認識させるための場所だよ』そう、彼は言っていた。



いらないものと言われて来たグレンさん、だから、グレンさんは誰も信じてないって。


それを聞いたから、私はグレンさんとも向き合うって決めた。


グレンさんから、直接そのことを聞いたわけじゃない。だから、それ以上のことは知らないけど…きっと、閉じ込められた時の事、思いだしているんだ。



胸が痛んだ。こんなグレンさんを初めてみたから。なにか、したかった。

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