二重人格神様~金と碧の王~


「ライ、どこにいくのですか?」


「アレス...隊長」


立ち止まり、バツの悪そうに顔を反らしそのまま横切る。


「ライ、もうやめなさい。ルーテル様がお前を見ることはない。届かない思いのために、自分を犠牲にすることはない。今なら間に合う。ライは優秀だ。お前を無くしたのは痛い」


「アレス隊長...」

「戻ってきなさい、ライ」


ライは力いっぱい手を握った。葛藤し、アレスの言葉に従うか迷う。

だが、脳裏に浮かぶルーテルの姿にライはその考えを振り払った。


「すみません、俺には出来ません」


「.....ライ」


「あいつを、一人には出来ない。ほっておくことなんで、出来ません。グレン様があの花嫁を思うように、俺も...」


「...」


思っているから。その言葉をライは口に出来ない。


その理由は考えたくない。


そして、そのまま歩き出し夜の闇に消えた。それを、アレスは悔しそうに見つめていたのだった。


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