二重人格神様~金と碧の王~
「それは…その」
「こっちおいで」
頬にあった手で私の手を握り、弱弱しく引き寄せる。それを受け入れると海鈴さんの心臓の音が耳をかすめる。同時に聞こえる雨の音に私達は口を開かない。
異様な静寂だけが、部屋をつつむ。
「…?」
あれ、なんだろう…なんか、おかしい…。なんとなく感じる違和感に顔をあげると海鈴さんは目を瞑っていた。
「海鈴さん?もしかして、まだ眠いんですか?」
「え…あぁ…いや、そんな事ないよ」
うっすらと目をあけ囁くもの、その様子は不自然だ。海鈴さんは「そんな事ない」って言うけれど…でも…なんか、いつもと違う。腕から抜け出し起き上がる。その顔を見れば、まるで生気がないみたい。
「あの、具合でも悪いんですか?」
「大丈夫…心配しないでくれ」
そんなことを言われても…心配だよ…
不安な顔をしていたんだろう。不意に目をあけ、視線がぶつかると彼は苦笑いをこぼす。
「数日ぶりに戻ると、力のバランスが分からなくなるんだ。それに加え…最近、力が弱っているから力が入らないだけ。しばらくすれば元に戻るよ」
「あ…は、い…」
海鈴さん…やっぱり力が弱っていたんだ。グレンくんから聞いていたけど、こう見ると本当なんだって実感する。
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