二重人格神様~金と碧の王~
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「じゃあ、部屋まで気をつけて戻ってちょうだいね」
「はい」
数十分後、夕食を終え私は部屋に戻ることになった。フェイランさんの送ると言う言葉を断り部屋を出る。
本当はルーテルさんのあんな話を聞いた事もあり、送ってもらったほうがいいのかもしれない。だけど、それに頼ってばかりではいざ!っていう時に何も出来ない。
だから、1人で帰るくらいのことをすることにしたのだ。
「何かあったら、大声で叫ぶのよ。誰かしら来るから」
「わかりました。じゃあ、いきますね」
「えぇ」
軽く手を振り海鈴さんが眠る部屋へと戻る。渡り廊下には雲の隙間からもれる月明かりが照らす。
朝からずっと雨が降っていたせいか、今日は雲が多いみたい。
その光景を眺めながら歩き進める。わたしの足音が静かな廊下ではよく響く。
なれないヒールをはいた時のように。
それにしても、海鈴さん、目が覚めたかな。夕食を食べようと部屋を出た時、朝とは違いとても安らかな顔だった。
苦しんでいるよりはいいけれど…安らかなのも不安だ…
なんて、そんな事を考えても仕方がないか…フェイランさんの言う通り、起きるのを待とう。
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