二重人格神様~金と碧の王~
そう考え歩き続けると、不意に私の名前を呼ぶ声がした。
「いのり」
「…え?」
いま…誰か、呼んだ?振り返るもの、そこにはダレもいない。気のせい…かな。
首をかしげ振り返る。そして、再び歩くとまた声がした。
「いのり、こっちにおいで」
「…あ」
まただ…。気のせいなんかじゃない。この声、私は知っている。何回も、私の夢に出てきた声だ。不思議と落ちつく優しい声。
無意識の歩く足が止まり、わたしは囁く。
「あなたは…あの、どこに…いる、の?」
「おいで、こっちにいるから」
「こっち…?」
「そう。誰にも見つかってはいけないよ。急いで、ここにおいで」
なんとなく。本当に感覚的なものだと思う。その声は上の、外から聞こえてくる感じがした。
そこに行けば、あの声の正体がわかるの?ずっと、私に語りかけていたあの声に主。惹かれるように私は踵を返し走った。
長い糸を物凄い勢いで手繰り寄せられているように走る。その時、頭の中に海鈴さんはいなかった。あの声の正体を知りたい、どうして私に語りかけるの?
。