二重人格神様~金と碧の王~
数歩あるき、グルグルと360度見渡すがやはり誰もいない。
もう、いなくなってしまったのかな…ここに来るまで走ったけど時間…かかったし。誰にも見つからないようにって言っていたから、きっと何かあったのかもしれない。
残念…会えるって思ったのに…
「…帰ろう」
海鈴さんが待っている。
踵をかえし、その場から立ち去ろうとした時、頭上からフッと鼻で笑う声が聞こえた。
「え?」
瞬時に上を見上げると、そこには少し高い位置に座りこむ人影。
口元にうっすらと笑みを浮べながら私を見下ろし、風に靡く金色の髪を耳にかける。
今度は、はっきりと見えた。その姿を。
「あ…」
「やっと、二人きりで会えたね。いのり」
その声はやっぱり、聞きなれた優しい声…
「あなたは…シャカ…様」
少し前に、すれ違ったシャカ様だ。この世界の傍観者で、一番長く生きている神様。
ううん。それだけじゃない…その姿はお父さんと似ている…忘れることが出来ないその姿に私は言葉を忘れてしまったかのように固まる。
瞬きもせず、ただ、彼を見つめれば今度ははっきりとした笑顔で私を見た。
「その名を口にするって事は…グレンから名前を聞いたのか?」
小さく頷くとシャカ様は「そうか」とかえす。
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