二重人格神様~金と碧の王~
「なんの為に、そんなことを…」
質問にシャカ様は少し迷うような仕草をしたあと、視線を落とす。
「約束だ。大切な人間との…最後の約束」
その時、シャカ様の表情は何かを思いだすように、遠くをみつめ私を見つめた。
まるで、私を見ているようで、みていない。
そんな顔。わたし…この顔を見たことがある。それは、お母さんの命日に墓参りに行くと…お父さんは必ずこのような目でみた。
やっぱり、この神様は…
「もしかして、おとう…さん、なの?」
私の声が響いた瞬間、月が雲に隠れ、周囲は暗くなる。
私の声も夜の闇に消えそうなほど小さい声。それなのに、シャカ様には鮮明に聞こえているのだろう。
再び月明かりが差し込み、私と視線が交わると、シャカ様は微笑む。
ドキッと胸が高鳴った。手を広げ優しく微笑む姿に、いつも抱きしめてくれた親との記憶が蘇る。
間違いじゃなかった。この神様は…
「あぁ。こっちにおいで、いのり」
「お父さん!」
その胸に飛び込むと、お父さんは私を大きな腕で抱きしめる。
海鈴さんとは違う懐かしい安心感に涙がこぼれた。会いたくて、会いたくて、仕方がなかった。
存在を確かめるかのように、きつく抱きつくと、お父さんは苦笑いをこぼす。
「どうした?そんな子供みたいに」
「だって、だって!ずっと、会いたかったから」
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