二重人格神様~金と碧の王~


そんなの…いやだ。だって、せっかく思いが通じあったのに…離れたくなんてない。


首を左右にふった。震える口で「いやだ」と口にすれば、お父さんは肩にあった手を離す。


「いのり…いいのか?海鈴がこのまま…消えてしまっても」


「そんなの、いやだっ」


「なら、答えは決まっているはずだ」


少し怒りを含んだ声に涙がこぼれた。いやだよ…そんなの。だって、こんなに好きなのに離れなくちゃいけないの?


手で顔を覆い、声を堪えて涙を流す。肩は小刻みに震えて、胸がぎゅうと締め付けられちた。


お父さんの言う通り、今の話を聞いて答えなんて決まっている。でも、いやだよ…


「いやだっ」


いまさら、彼から離れるなんて出来ない。彼と過ごした時間は私にとって大切な時間だ。この先もずっと一緒にいたい…いたいよ…。


なき続ける私にお父さんは何も言わない。黙って私を見つめるだけ。


どうしてなにも言わないの?答えがそれしかないから?離れるなんて、絶対に嫌だ…いただよ…



流れる涙を拭いお父さんを見上げる。その顔はとても険しく、答えはもうないってわかった。

.
< 366 / 513 >

この作品をシェア

pagetop