二重人格神様~金と碧の王~
「…偶然なんでしょうか。わたしには、なにかシャカ様には思惑があるような気がします」
「狙っていた、そう言うことかしら」
二人の会話にグレンは耳を傾けているような、いないような顔。遠くを見る瞳には何がうつっているんだろうか。
「と、言いますか…以前グレン様が言っていました。シャカ様には守らないといけない「約束」があると…それと、関係しているのでは?約束のために、偶然を装いこのような展開に誘導したかと」
「なるほどね…って、グレン様?話を聞いているの?」
フェイランの言葉にグレンはゆっくりと振り向く。そして、再び視線を窓の外に移す。
「グレン様?」
「…あぁ…聞いている」
絶対にうそだ。二人は即座にそう思う。だが、それを追求することなど出来なかった。
グレンが、今、考えている事が分かったからだ。
どこか遠くを見るさきには、きっといのりだろう。恋焦がれるような顔は初めてみた。だが、幸せは感じられない、とても切なくなるような顔にもうどちらも言葉など出せなかった。
どのくらい、沈黙が経過しただろうか。沈黙を破るようにグレンは視線を外し歩きだす。
「どこに行くの?グレンさま…迎えに…連れ戻しに行かないの?」
「そんな権利…俺にはない。俺は、守れなかったんだ」
「え?」
「いのりをこの手で守れなかった」
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