二重人格神様~金と碧の王~
最終章
彷徨い
***
『で、名前は決めたのか?』
『あ、ううん。これがいいなって言うのはあるんだけど、沢山あって迷っているの』
あぁ…まただ。この声、やたら透明感がある優しくて、落ちつく声。
海鈴さんともグレンさんとも違う声。この声、誰だったっけ…
『そうか、たとえば?』
『ん~…みずき、あい、ことね、るか…あとは、えー…っと』。
『女ばかりじゃないか』
なんの話をしているのかな。この会話の先…なんとなく、覚えているような…いない、ような…。
なんだった…け?思いだせないよ…ずっと、ずっと、昔の事過ぎて、わからない。
誰の声で…誰と誰の会話なんだろう…。
近いような、遠いような、そんな感覚…。
掴もうと手を伸ばせば届くのに、届かない。でも寂しくない。だって、その声がとても温かくて、気持ちよくて…落ちつくから。
・