二重人格神様~金と碧の王~
「何も覚えていないのか?あの時、なにが起こったのか」
「あの時…?」
「深界でのこと」
「えっと、その、なに…も…わから…な…あっ」
その時、なんの予兆もなく頭に記憶が走馬灯のように流れ込んでくる。
ルーテルさん達の事と、グレンさんの事。
そうだ…わたし…剣で刺されたんだ。
それから、おかしな感覚に襲われて、髪が金色に変わった。そうしたら頭が割れそうなほど痛くて…意識を失ったんだ。
あれから、どうなったの?グレンさんは…無事、なの?
「グレンさん…え、えっと、あの、グレンさ…ん、は?わたし、彼を庇って…そ、そうだ…き、傷は」
腹部を触るもの、そこからは何も流れていない。服をめくるもの、傷一つない。
「え…そんな、はず…だって、痛かったのに…それじゃあ、グレンさんの事、守れなかったの?」
身体が震えた。守りたいって思った。
守られたぶん、守ってあげたいって。それなのに、どうして…。
頭を抱え、震えだす私の背中をお父さんは冷静に撫でる。
「いのり、さっきも言った。落ち着いて…グレンなら、大丈夫だから」
「う、嘘。だって、傷がないんだもん。彼、また、なにをするか…も、い、行かないと…グレンさんがっ」
身体を起こそうとするが、やはり力が入らない。
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