二重人格神様~金と碧の王~

「私が、いのりの力を封印して人間として育てたせいだ。あの村の事も、海鈴に預けたことも間違いだったのかもしれない」

お父さんの表情が酷く曇った。そんな、顔…しないで…。

「だい、じょうぶ…だから」

「え?」


思い顔を動かし、お父さんを見上げながら首を左右にふる。


「苦しいけど…頑張る。だから、お父さんは心配しないで…」

「いのり…」


「だって、それはお母さんと決めた事だって言ったよね?それに、もし…私が今のように生活してなかったら…彼らにも、会えなかったから…だから、いいの…」


「海鈴とグレンの事か?彼らの事、本当に思っているんだね」


それは、そうだよ…彼らと過ごした時間は、何事にもかえがたいものだから。


姿を思い浮かべれば、なんだか会いたくなって来る。


「う、ん…あい、たい。本当に、無事なのか…心配だから」


「そうか。身体が安定したら、深海に戻すよ。それまでは、我慢してくれ。彼も彼で、混乱しているから」


「…こん、らん?」


「連れ去る時、言ったんだ。いのりが私の娘だとね」


「…そう、なの?あの、なんて、言ってた?」


「驚いていたよ。あとの事は…知らない。いのりの事で精一杯だったから」


そう、なんだ…。グレンさん、どう、思ったんだろう…

「そ…っか」

< 411 / 513 >

この作品をシェア

pagetop