二重人格神様~金と碧の王~
「私が、いのりの力を封印して人間として育てたせいだ。あの村の事も、海鈴に預けたことも間違いだったのかもしれない」
お父さんの表情が酷く曇った。そんな、顔…しないで…。
「だい、じょうぶ…だから」
「え?」
思い顔を動かし、お父さんを見上げながら首を左右にふる。
「苦しいけど…頑張る。だから、お父さんは心配しないで…」
「いのり…」
「だって、それはお母さんと決めた事だって言ったよね?それに、もし…私が今のように生活してなかったら…彼らにも、会えなかったから…だから、いいの…」
「海鈴とグレンの事か?彼らの事、本当に思っているんだね」
それは、そうだよ…彼らと過ごした時間は、何事にもかえがたいものだから。
姿を思い浮かべれば、なんだか会いたくなって来る。
「う、ん…あい、たい。本当に、無事なのか…心配だから」
「そうか。身体が安定したら、深海に戻すよ。それまでは、我慢してくれ。彼も彼で、混乱しているから」
「…こん、らん?」
「連れ去る時、言ったんだ。いのりが私の娘だとね」
「…そう、なの?あの、なんて、言ってた?」
「驚いていたよ。あとの事は…知らない。いのりの事で精一杯だったから」
そう、なんだ…。グレンさん、どう、思ったんだろう…
「そ…っか」
・