二重人格神様~金と碧の王~


「あ、はい。配下の者に一連の事を話したようです。連れ戻しに行け、と、言われていましたが…その、「迎えに行く権利が、ない」と、言っているのを聞いてしまいました。きっと、自身を庇った事を悔いているのでしょう」

その報告にシャカは豪快に肩を揺らしながら笑う。


らしくない笑い方に男は怪訝な顔をした。


「全く、それはとても正しい。私との約束を破ったのだ…権利がないのは言うまでもない。それに、仮に迎えに来たとしても、いのりに会わせるつもりはない」


「…そう、なのですか?」

「覚醒してしまったいのりを傍に置くことは出来ない。ましてや、今は力が不安定だ。それに加え、安定したとしても、もし仮に力が暴走するような事があっては彼女が壊れてしまう。それを任せられるほど、信用していない」



笑うのをやめ、視線を明後日の方にむける。


「ですが…いのり様は…きっと会いたいはずです」

男の台詞にシャカは動かない。どこか遠い方向をみたまま。


こうなるとシャカはもう話さない。言いたいことだけ言って、黙るのはお得意なことだ。


よくこんな神の傍にいるな。なんて、考えていると、予想外のことにシャカが言う。


「なんだ、その不満そうな顔は。仕方がないだろう…どのみち、問題はあったのだ…苦しみ、あの事で悩むのなら…ここにいたほうがいい。悲しませないと、彼女と約束したんだ」



それは以前、シャカがいのりに言った事だろうか。グレンか海鈴か…離れて両方を選ぶか。


「シャカ様がそれを望むのなら、私はそれに従います」


「それなら、もう「会いたい」などと二度と言うな」


少し威圧的な声。男は、聞こえないようにため息をはきその場から立ち上がる。


「承知致しました。でわ、私はいのり様のお傍にいますので…なにかあればご報告いたします」


「…あぁ」


今だ明後日の方向を見ているシャカ。その姿をもう一度見て、男はその場を去っていった。


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