二重人格神様~金と碧の王~
『そ、そうだけど…でも、でも…』
『その人はね、私の仕事仲間だったんだ。頼りになるし、寂しい気持ちを埋めてくれる。彼女の事を愛していたけれど、私はいのりの母親と出会ってしまった。今思えば…どこかで間違ったのかもしれない』
『それって、お母さんの事…最初から愛してなかったって事?』
『…いのりがいたから、彼女を愛するように頑張ったんだ』
そんな…
悔しいと言うより、悲しさが溢れてくる。どう、して…お父さんはそんな事を言うの?
『嘘だよ…』
『真実だよ?だから、会って欲しい』
そんな事…信じない。お父さんが、そんな事言うなんて、嘘に決まっている。信じない。
絶対に、そんなこと…
『信じない!!』
ガタンと椅子から立ち上がり、私はリビングを飛び出した。
乱暴に玄関のドアをあけ、裸足のまま飛び出す。
小石やチリが足に突き刺さるが痛みなんて、感じなかった。
ただ、私は走った。零れ落ちる涙を拭い、向かったのは龍神様の場所。
それなのに…
『そんな…』
そこには、なにも無かった。川が規則正しい音をたて流れ、水面には月が反射して光を帯びている。
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