二重人格神様~金と碧の王~


感動とはいい難い再会を果たした後、男はグレン達の事がとても気掛かりだったのだ。


あのように落ち込んだグレンの顔はひさしぶりに見た気がする。

幼い頃に分かれたきり会ってはいない。


さぞかし大きくなっていると思っていたが、予想以上に大人びた顔に男は安心した。


そして、同時にグレンの雰囲気が変わった。幼い頃の記憶ではあるが、他者を軽蔑し恨み、信用していなかった頃のグレンではない。


その瞳にはグレンが持っていなかったものがあったのだ。

心なしか、優しい雰囲気をもち、いのりを思う気持ちが男には見えた。


迎えに行く権利がない。そういった時の目はとても悲しい。

そうさせたのが、シャカの娘とは…。これが運命というものか。

が、しかし…彼らが来るかはわからない。なんせ、彼らも今は不安定だ。


いのりの危機にグレンが飛び出したのはいいが…きっと海鈴は出てこられなくなった可能性が高い。


本人も、配下の神も気付いてないが、彼らは彼らで危機でもある。


どうしたものだ。全てが上手く行けばいいのに、そうはいかない。


その時、不意にいのりの表情が更に険しくなる。


「いのり様?」


「嘘…だよ…信じ、ない」


手を力一杯握りしめ、そのままもがき苦しむ。


どうする事も出来ない。過去の主が愛した者の苦しむ姿は男も見ていて苦しいものだ。


「頑張ってください…いずれ、彼らが迎えにきます。その時にご心配かけぬように」

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