二重人格神様~金と碧の王~

そう呟いた時だった。

「…?」

何かの気配に気付いたかのように男は顔をあげ、どこか遠くを見つめる。そしてそのまま歩き出した。


どこに行くのだろう。少し恐い顔をしたまま歩く男。真っ白い世界をただ黙ったまま歩くと、少し先に大きな扉がある。


大きな枷が巻きつけられており、とても開きそうにない。

だが、男が扉に手を伸ばすと、枷が動く。ジャラと鎖が解けていき、扉が開くとそこには男がいた。


目が合うとそのまま敬意を払うかのように頭を上げ、膝をつく。


「…久しぶりだ。アレス」

「…はい」


「お前の気配がしたから来てみた。どうやら、その様子だと、お前だけか」

男の言葉にアレスは申し訳なさそうに「はい」と呟く。


「まぁ、いいさ。あのグレン様がこんな早くに来るとは思っていない。いのり様のことが心配で…来たのか?私が近くにいなかったらどうするつもりだったんだ?あの門は私とシャカ様しか開けられないんだ」


「気付いてもらえるまで、居座るおつもりでした」


「アレスらしい。こっちだ…いのり様は、今は眠っておられる」


「そうですか。その…あの事は、やはり事実なのでしょうか?その、私は現場を見ていなく…聞いたまでですので、とても信じがたいです」


「何を言っている。感じるだろう?この気配を…。シャカ様と似て異なる気配を」


「はい。では…本当なのですね?」


「あぁ。ほら、見てみるといい」


そう言われ足元を見るとそこには枯れた睡蓮の花。

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