二重人格神様~金と碧の王~

「自室に篭っています。声をかけても返事もありません」

「そうか」

「はい。あの…聞きたい事がございます」


「…なんでも言ってみるがいい」

その言葉にアレスを見上げ、口を開く。



「どうして、いのり様を人間として育てたのでしょうか?半神として育てていれば、このような事には…」


どう答えればいいのだろうか。少し男は悩む。そして、言葉を選ぶように無い空を見上げ言う。


「約束だからだ。それが、シャカ様の選んだ答え。いのり様の幸せを選んだ…一番辛くて、最上級の愛情でもある。だから私はグレン様のもとを去った」


「それは…」


「子育てなどしたことのないシャカ様を支えるために。運命とは面白いもの…まさか、面倒をみた二人が恋仲にな
るとは」


「…」


「だから、私は一刻も早くいのり様が目覚めるのを待っている。そして、彼らが迎えに来ることも」


そんな理由があったのか。この男が突然いなくなった理由にアレスは納得した。


そしてアレスも思う。男を同じことを思い、願うことを。



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