二重人格神様~金と碧の王~


***



暗闇で耳を塞いだわたしは、随分とここをさ迷った。もう、本当に此処がどこなのかわからない。


ただ、時々聞こえてくる雑音と声におかしくなりそうだった。


聞こえてくる言葉はほとんど同じ。お父さんの拒絶の声とお母さんの悲しむ声。



『だから…最初から遊びだ』


『もういい。お前とは、今日で最後だ』


『そんな事…言わないでっ』


『泣く女は好きじゃない』


『子供が出来た?そんなもの…俺には要らない』


『他に女がいる。だから、お前は邪魔だ』


やめてよ。どうして、お父さんはそんな事を言うの?お母さんの事…愛していたんじゃないの?


『愛してなどない。言ったはずだ。病弱だったお前を暇つぶしにしただけだと』


『そんなことっ…いわ、ないでっ!』


どうして、こんなに悲しませるの?すっと思っていた。お父さんとお母さんは思いあっていたって。


今までの事は、嘘だったの?


『だから、言ったじゃないか。いのり?私はキミの母親を愛してなどいない。君がいたから、君のために愛したふりをした。そして、存在を消すため、私と切り離すために力を封印したんだ』

.
< 431 / 513 >

この作品をシェア

pagetop