二重人格神様~金と碧の王~
全部を忘れて、楽になりたい。もう、あんな声は聞きたくない。
目をつぶった。全てをシャットアウトするかのように身をゆだねた時、ふと記憶の片隅にある人物が浮かんだ。
私の手を掴んでくれた。いつも私をまもってくれた。
その腕で抱きしめ、沢山の嬉しい言葉をくれた…
『海鈴…さん』
そして、乱暴だけれど、触れる手がとても優しい…グレンさん。
待って…忘れると言うことは、彼らも忘れなくちゃいけないの?
『当たり前よ。全部、ぜーんぶ…楽になりたいんでしょ?』
『うん…でも、彼らと過ごした時間は…忘れたくない』
『忘れたほうがいいわ?だって、貴女がここに来てから、あの界の者は、誰も貴女を迎えにこないのよ?彼らも、あなたが…いらなかったの』
そ、そんなこと…
『神の貴女なんて、いらないわ。だって、愛したのは人間である貴女だもの。半神の貴女じゃないわ』
『……』
『いいえ。実は彼らもお父様と同じで、最初から愛してなどなかったのかも。あの花嫁が邪魔で貴女を花嫁に利用したのよ。だから、あの子がいなくなった今、必要ないわ。お母様と同じ、弄ばれたに過ぎないわ』
『…やめ、て。また、そんなことを』
海鈴さんもグレンさんもお父さんと同じで…わたしの事、愛してなかったの?遊ばれていただけ、だったの?
『そうよ。彼らはとても冷たい王だから。それでも、忘れたくない、の?』
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