二重人格神様~金と碧の王~
『……』
そんな言葉、信じない。普段なら、そう思っていたのに…
『好きじゃ…なかった…の』
私はその言葉を信じてしまった。ワタシの言葉はまるで魔法のように私の脳内に響き渡る。
暗示をかけられたかのように、心が闇に包まれていくのが分かった。
『…もう、いいよ』
なんか、とても疲れちゃった。もう苦しみたくない。愛されてなかった記憶なんか、もう、いらない。
『忘れ、たい。全部』
『そう。それで、いいの。ワタシに身を委ねて…』
『うん…』
そう、目を覆う手に身を委ねると、また、声が聞こえた。
『それで、いいの?』
え…?
今度は、どこか幼い、子供の声。
そっと目を開けると、そこには小さな男の子。金色の髪に、グレンさんと同じ金色の瞳。
グレン君より、少し小さいその子は目が合うと微笑んだ。その笑みは海鈴さんにとても似ている。
そしてもう、ワタシはいない。
『あ…あの…』
『ねぇ、本当に忘れてしまっていいの?』
『え?』
『夢は信じてはいけないよ。信じるのは、パパだけだよ』
『ぱ…パパ?』
パパって、誰のこと?もしかして、お父さんのこと?
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